魔王候補。2

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 広場に戻ると、買い物を終えたのだろう先生に「危機感が足りない」と怒られた。
「貴方が怪我でもしたらレアリィがどれだけ悲しむか……。その行動は素晴らしいものだけれど、状況を考えて行動するようにね」
「はい、解りました……」
 現在の俺は丸腰で、手に馴染み始めた剣は部屋に置いたままだ。これからは、常に帯刀するようにした方が良いだろう。誰かを護ろうとする時、武器が無くては戦う事すら出来ないのだから。
 ともあれ、異常な事態に巻き込まれたのは確かなのだ。俺は先生にあの少女の事を説明し……しかし、返って来た反応は予想外のものだった。
「……もしかしてその女の子、浅黒い肌に銀髪で、小振りの杖を持っていなかった?」
「持ってましたし、外見もそんな感じだったと思いますけど……まさか、知っているんですか?」
「……多分、ね」
 そう苦々しく言って、そして言葉を失ってしまった先生と共に城へと向けて歩いて行く。紫藤さんはいつの間にか消えてしまっていて、その事を先生に問い掛けると、「彼女は『影』だから。心配しなくても大丈夫よ」という良く解らない回答を貰った。
 裏路地での登場も唐突だったし、死体を見ても表情一つ変えていなかった。それらから考えるに、紫藤さんには何か秘密があるのかもしれない。そんな風に思いながら街を抜け、城門の前にまでやって来ると、春風と会話を交わしている三人の男女の姿があった。
 一人は俺よりも少し身長が高い栗毛の少女。風と共に揺れる髪は長く、その手には不恰好ながらも年季が入った杖が握られている。
 そんな少女のすぐ隣に、黒い髪の男が一人。すらりとした長身で、しかし武器らしい武器は何も持っていないように見える。それなのに、遠目からでも何か不可思議な雰囲気が感じられた。
 そして、そんな男の足元で笑っている少女が居て――彼女は浅黒い肌に銀髪で、短めの杖を手に持っていた。
「……なん、で」
 思わず足が止まり、声が漏れる。それは間違いなく、路地裏で男達を一瞬で肉片に変えた女の子だった。
 それに気付いた途端、恐怖に搦め捕られて体が動かなくなる。そんな俺とは対照的に、先生はゆっくりと三人へ近付いていき……そして、春風に対して笑顔を振り撒いてる少女が先生に気付き、無邪気な微笑みを浮かべ、
「あ、ちーちゃんだ! 久しぶりー」
 少女の言葉に、数歩前に立つ先生は普段通りの調子で、
「久しぶりね、クレア。元気にしてた?」
「私は元気だよー。それよりちーちゃんこそ、いつの間にこっちに戻って来てたのー? って、あれ……?」
 疑問符と共に、クレアと呼ばれた少女の視線が俺へと向いた。そしてその瞳が細められ……蛇に睨まれた蛙のように脂汗を流しながら固まり続ける俺に対し、助け舟を出してくれたのは先生だった。
「紹介するわ。彼はレアリィの恋人である真鳥・五月。そして、私が探し求めていた人よ」
「嘘、レアリィの――って、あの二人が見付かったの!?」
「えぇ。ようやく、ね」
 そう言って先生が嬉しげに笑い、同じようにクレアが「良かったね、ちーちゃん!」と微笑んだ。その様子を見るに、クレアも俺とレアリィの過去を知っているらしい。
 恐怖を感じながらもそう思っていると、先生が話から放り出されていた二人に視線を向け、
「それで、そちらの二人は?」
 その問いに、対する二人の内、栗毛の少女の方が少々緊張気味に、
「えっと、わたし、アリア・フェイスタと申します!」
「俺はテオと言う。苗字は無い、ただのテオだ」
 続いた男、テオにはどこか達観した色がある。その若々しい外見以上に年齢を重ねているような、そんな印象を感じた。
「クレアに連れられて、俺達はこの城にやってきたんだ」
「この二人が……というか厳密にはアリアちゃんがね、私の選んだ……って、ちーちゃん、そこのお兄ちゃんは関係者なの?」
「ええ。彼も候補の一人よ」
「へぇ、そうだったんだ」
 そう笑い、そしてクレアが固まったままでいる俺の目の前にやって来た。
 カイナと同程度の身長しかない彼女が相手だと、俺は自然と見下ろす形になる。けれど、どうしてか、クレアから見下ろされているような気がして酷く落ち着かない。
 そんな俺に対し、クレアは可愛らしく微笑み、
「ごめんなさい、お兄ちゃん。嫌なところを見せちゃったね。……でも、あれは秘密ね?」
「は、はいっ!」
 先生に話してしまったとは言えず、人形のように首を上下させる。その様子にアリアと名乗った少女が不思議そうな顔をしていたけれど、今は弁解する余裕や余地が一欠けらも存在していなかった。 


 
 部屋に戻ってきた時、出たのは大きな溜め息だけだった。
 あの後、クレア達は大臣達と話があるという事で城の奥へと歩いて行き……そして俺は、先生からクレアという少女についての話を聞いた。
「彼女は私の古い友人なのよ。そして、魔王候補を探す役割を与えられた一人でもあるわ」
 クレアの容赦無い強さを見せ付けられる事となった身とすると、彼女が魔王候補選出者として相応しい技量を持っている事は理解出来る。だが、あの残虐さははっきり言って異常だ。例え他のポイントによって選ばれたのだとしても、何か裏を感じられずにはいられなかった。
 そんな風に思いながらも、しかし深く追求する事は躊躇われ、俺は先生と別れて部屋に戻り……しかし、すぐに平穏は訪れてくれなかった。
「五月」
 硬い、けれど不安さも混じった声の先には、ベッドに腰掛けているレアリィの姿があった。
 怒らせてしまった、という事は理解していた。しかし、俺の体は謝罪よりも先に彼女の体を抱き締めていた。
「ちょ、ちょっと、五月?!」
 驚きと困惑の入り交じったレアリィの声を聞きながら、俺はその柔らかな髪に顔を埋め、
「ごめん。マジこめん。でも、ちょっとだけ、このままで……」
 乱れていた心を落ち着かせる為に、強く彼女を抱き締める。俺の居場所はここだと、彼女は失われていないのだと、そう自分自身を強く納得させるように。
 対するレアリィはそんな俺を突き放さず、そっと腕を背中に回してくれた。そうして俺は彼女と抱き合いながら時間を過ごし――ゆっくりと彼女から離れると、そのまま頭を下げ、
「……ごめん、勝手に外出して」
「それはもう大丈夫。それより、何かあったの?」
 俺の様子にただならぬものを感じたのか、不安げにレアリィが問い掛けてくる。俺はそれにどう首を振ろうか迷い、そのまま跪くように膝を付き、
「ちょっと人助けを仕損じてさ。クレアって女の子を助けようと……いや、結果的には何も出来なくて……」
 上手く説明出来ない。そんな俺に対し、レアリィは意外そうな声で、
「……クレア? クレアって、あの、浅黒い肌で銀髪の女の子?」
「そうだけど……レアリィも知ってるのか?」
 俺の疑問に、彼女は納得と共に頷き、
「クレアさんに助けられたって事は……凄かったでしょう?」
 暗いトーンで響く言葉に、俺はうなだれるように頷き、
「……ああ、凄かった」
「五月が困惑するのも解るよ。あの人は、敵と認識した相手は容赦なく殺してしまえる人だから……」
 そう辛そうに言いつつも、普段は良い人なんだけどね、とフォローなのかどうなのか良く解らない言葉をくれた。俺はそんなレアリィを見上げながら、
「尚更、ごめん。心配掛けた」
「もう大丈夫。私だって、カイナと一緒に部屋を空けていたんだから。……でも、ちょっと淋しかった」
「今度は一緒に買い物に行こう。先生やカイナも連れてさ」そう、ご機嫌取りでは無く、本心から告げたところで、「そういえば カイナは?」
「疲れちゃったみたいで、今は部屋で眠っているところ」
 でも、と彼女は笑い、
「私達も同行して良いって、正式にお許しが出たよ」
「マジか、良かった……」
「結局のところ、魔王様は偶像だから。大臣達の意思を叶える人材なら問題なくて、それを選び出すまでの道中には興味がないみたい」
「そんなもんなのか」
 そう答えながら、先程出逢ったアリア・フェイスタという少女の事を思い出す。
 魔法使いであるという彼女は俺よりも二つほど年上らしく、少女というよりは女性というべき年齢だった。しかし、その外見から実年齢よりも幼く見えるアリアは、俺から見ても少々頼りなく感じられて――そんな彼女が魔王候補として選ばれたというのだから、恐らくクレアは彼女を『扱い易い人材』だと判断したのだろう。
 それに嫌悪を感じつつも、『こちら側』における一般人の枠の中にすら収まらない自分自身の事を思って、何も言えなくなる。
 ともあれ、
「これでカイナを危険な目に合わせないで済むな」
「うん、本当に良かった。……まぁ、あと数年先なら状況は変わっていたかもしれないけれど、今のカイナは、まだ外の世界に対応出来るほど強くないから……」
 初めてカイナと出逢った時の事を思い出し、俺は頷きと共に同意する。
 とはいえ、カイナもカイナなりに頑張っているから、時間と共に対人に対する恐怖は治まっていく筈だ。だがそれでも、今はまだ彼女を護る存在が必要だろう。そしてそれがいつ不要になるかは、今回の旅で判断出来るに違いない。
「それで、いつ頃からカイナは候補探しを始めるんだ?」
「まだ解らないけど、近い内なのは確かかな。カイナはもうどの地域に向かうか決めているみたいだったから」
「なら、俺達も準備をしておかないとだな」言って、俺はレアリィの隣に腰掛け、「でも、今日はもう遅いし……明日にでも、イフナに詳しい話をしてくるよ」
「解った。訓練がお休みになったら、まずは五月の鞄を買いに行かないとね」
 そう言って微笑むレアリィに頷き返し、そのまま他愛のない言葉を重ねていく。
 そうして時間にして三十分ほど経った頃、部屋の扉がノックされた。
「コースト様、真鳥様、御食事の準備が整いました」
 聞こえて来た声は紫藤さんのものだ。俺達はその言葉に「解りました」と返事を返し、いつものように部屋を出る。
 すると、廊下で待っていた紫藤さんの一礼に出迎えられた。その姿に変わったところはなく、ショックを受け続けていた俺とは違う芯の強さが感じられて――と、そんな俺を置いてレアリィが紫藤さんの脇を抜けるように歩いて行き、正面にあるカイナの部屋へと向かった。彼女はその扉を軽くノックし、返事が帰ってこない事を確認してから鍵を開け、中へ入り……
「……」
 ふと紫藤さんを見てみると、彼女は普段の落ち着いた様子とはまた違う、優しげな表情で開かれた扉の向こうを見ていた。と、紫藤さんが俺の視線に気付き、何事も無かったかのようにいつも通りの無表情に戻ってしまった。……つまり普段の紫藤さんはポーカーフェイスという事か。
 と、レアリィが一人で戻って来た。彼女は俺達に困ったように微笑み、
「まだ寝てました。暫くしたら起きて来ると思うので、カイナの夕飯はその時にお願いします」
「畏まりました」
 一礼と共に紫藤さんが言い、そのまま直立で立つ彼女を後に俺達は食道へと歩き出す。
 メイドである紫藤さんは、必要な時以外は常に俺達の後ろを歩いてくる。『それがメイドの嗜みなのです』と彼女は言っていて、記憶が戻る前まではそれを当たり前に受け入れていた。けれど、今は違う。兵士として戦っていた記憶がある今、背後を歩く紫藤さんには違和感しか感じない。
 何故なら――こうして歩いている今、彼女からは気配というものを全く感じないのだから。
「……」
 昼間先生が言っていた事を思い出す。確かに紫藤さんは『影』のような人だ。……というか、確実にただのメイドではない。その漆黒のメイド服と良い、先生をマスターと呼んでいる事と良い、俺が知らない何かが確実にあるのだろう。
 そう思いながら背後に視線を向けると、紫藤さんは先ほどと同じように優しげな表情でレアリィの背中を見ていて……不意に真剣な表情で俺へと視線を向けると、何かに気付いたのかその場で深く頭を下げ、
「……申し訳ありません、真鳥様。御食事を御取りになられるのか、その御確認を怠っておりました」
「あー……多分大丈夫です。いつも通り、肉料理以外なら」
 今も頭の中には昼間の惨状が色濃く残っていて……同時に、俺の中には『数日前に人を殺した記憶』があり、こうして記憶が戻ってからは少々肉料理に対して嫌悪感が出てしまっている。とはいえ普通に食事を取る事は出来ているから、あまり意識しなければなんとかなるだろう。
 そんな俺の返事に紫藤さんが頷き、俺達は再び歩き出し……廊下を進み、階段を下り、城の一階にある食堂へ辿り着いた。
 部屋の大きさは、学校の教室を横に二つ並べた感じだろうか。奥には大きな厨房があり、テーブルクロスの敷かれた長テーブルが四つ並んでいるその光景は、良くも悪くも『食道』といった趣だ。
 因みに、食堂は東西に存在し、東側にある食道はメイドさんや城内での警護に当たる兵士達用に作られたものとなっており……先生にレアリィ、そしてカイナのような王国付属の魔法使いや、大臣などといった役職を持った人々は西側の食道を使う事になっているらしい。更に、魔王候補である俺も西側で食事を取る権利が与えられているのだという。
 けれど、俺達は東側で食事を取る。その理由は二つ。レアリィが子供の頃からこの食道で食事を取っていた、という事と、
「今日はごめんね、レアリィ。彼を勝手に連れ出してしまって」
 すまなそうに言う先生が、常にこちら側で食事を取っているからだった。
 そんな先生に、『何故東側で食事を取るのか』と尋ねた事があった。すると先生は苦笑と共に、
『食事って言うのはみんなで楽しんで食べるものでしょう? でも、向こうだと難しい顔をした人達ばかりで、なんだか食べた気がしないのよ。だから私はこっちで食事を取る事にしているの』
 という答えが返ってきて、先生らしいなぁ、と思ったのだった。
 そんな俺の隣に立つレアリィは、先生の隣に腰掛けながら、
「大丈夫です。でも、次はちゃんと私にも話をしてくださいね?」
「解ってるわ。……でも、本当にごめんなさいね。貴女達の記憶を探す旅が終わったって思ったら、少し気が抜けちゃって。それに……」言いながら、先生は俺へと笑みを向け、「……『向こう側』に居た時は、週一ぐらいのペースで買い物へ行っていたものね」
「行きましたね」
 レアリィの隣に腰掛けながら、俺は半年前までの日常を思い出す。レアリィがやって来るまで、美術委員の仕事は先生と二人切りで行っていたから、それが終わった後に珈琲を奢ってもらったり、一緒に画材を選びに出掛けたりした事が何度もあったのだ。
 その事を話すと、レアリィは合点がいったように、
「確かにあの頃、先生が休日にも出掛ける事がありましたけど……五月と出掛けてたんですね」
「まさかこんな事になるとは思ってもいなかったから、詳しく話していなかったのよ。でも、これならもっと早くに話をして、二人を逢わせておけば良かったかもしれないわね」
 転校生としてやってくる以前から、レアリィは『向こう側』の世界に滞在し、夜城達と同じように常識などを学んでいたのだという。その後俺の学校に転校して来たのは、先生には詳しく解らない生徒の内情を知る為だったらしい(そんなレアリィが一人暮らしをしていたのは、部屋に友達を呼んでも問題ないように、という配慮だった……らしいが、半年前の俺はそこで先生と鉢合わせする事となった。上手く行かないもんだと思う)。
 だが、それ以前から……というか、先生が美術教師を始めた四月から、俺は美術委員として先生と面識を深めていたのだ。もし先生の部屋に招かれるような事があったとしたら、そこでレアリィと出逢っていたのかもしれなかった。
「でも、俺としてみれば、レアリィが転校してきてくれて良かったですよ」
 短い間だったとはいえ、一緒に学校生活を満喫する事が出来たし……『曲がり角を曲がったら転校生と正面衝突』という、普通に生きていたら絶対に体験出来ないサプライズにも遭遇出来たのだから。
 そう思う俺に、レアリィが疑問符を浮かべ、
「どうして……って、やっぱり見えてたの?」
「おっとレアリィ、パンが来たぞ、パン」
「……五月」
 あからさまに話題を逸らすと、思いっきりジト目で睨まれた。けれどそれはレアリィでは無く早苗の仕草で、だからどうしても心が震えた。
 それが嬉しさの形で表情に出るのを感じながら、俺はバスケットに入れられて運ばれて来た焼き立てのパンを手に取った。コンビニエンスストアで手軽に買えていたそれとは違い、少し硬さがあるものの、仄かな甘みのあるそれはとても美味しいものだった。
 そうして夕食を食べていると、食道の入り口付近に新しい人影がやって来るのが見えて、自然と視線が向かい――俺は、動きを止めた。
 そこには三人の姿があった。一人は俺やレアリィと同年代に見える少女。一人はその少女に寄り添う青年。そしてもう一人は――
「あー、ちーちゃんめっけ! やっぱこっちにいたのかー」
 クレアと呼ばれた、褐色の肌を持つ少女だった。彼女の言葉に、先生は微笑みを浮かべ、
「向こうだと味気ないじゃない。クレアもそうでしょう?」
「うんっ。やっぱり、食事はわいわいと楽しく食べなきゃねー」
 そう楽しげに頷き、クレアがアリア達を引き連れて俺達の席の近くへとやってきた。そして俺の顔を見てにやーと笑ったあと、レアリィへと視線を向け、
「やっほうレアリィ。まさか恋人を作ってるなんて、お姉さん思わなかったよー」
「やっほうですクレアさん。お恥ずかしながら、大切な人が出来ました」
 そう微笑んで告げるレアリィに対し、クレアは先生の正面に腰掛けながら笑みを強め、
「これでレアリィに夜のアレコレを教えられるねっ!」
「クレアさんからはお断りです。というか、食事中ですから」
「あっさり断られた?! でも、大切な事なのよー?」
「基本については散々教えて貰いましたので大丈夫です」
 途端、その言葉を待っていたかのようにクレアが妖艶に微笑み、
「……へぇ、実践したんだ」
「く、クレアさん!」
 だん、と机を叩き、顔を真っ赤にしたレアリィが叫んだ。その様子にクレアがけらけらと楽しげに笑い……その様子を眺めながら、まさか二人がこんなにもフレンドリーだと思っていなかった俺は正直面食らっていた。というか、「五月は必要ないよね!」「必要だよねぇ、お兄ちゃん?」とか会話を振らないで欲しい。俺にどうしろというんだ。や、確かに夜のアレコレは気になるけれども!
 と、一瞬前とは別の意味で食事が喉を通らなくなってしまった俺の様子に先生が苦笑し、そして助け舟を出すように、
「二人とも、そこまで。取り敢えず、改めて自己紹介をしておきましょうか」
「そうだねー。それじゃ、アリアちゃん宜しく!」
 丸投げかよ。思わずそう突っ込みそうになった俺の正面。クレアの隣に腰掛けたアリアが改めて立ち上がり、
「えっと、わたしはアリア・フェイスタと言います。で、彼がわたしの恋人の、」
「テオだ。宜しく頼む」
 アリアと同じように立ち上がり、テオが軽く会釈を一つ。そして二人が腰を下ろしたところで、俺はレアリィと共に立ち上がり、
「俺は――」
 言って、俺は自分の名前を口に出せない事を思い出し――だが、少し頑張ってみる事にした。
「俺は――ま……まどり……さつき、だ。まどり、さつき。……おお、言えるもんだな」
 事情を知らない相手の前だというのに、少し感動してしまう。
 記憶が混在する形で戻った今、俺は自分の名前『真鳥・五月/神馬・一』を区別して発音する事が出来ない。しかし、『まどり』と『さつき』という単語自体は普通に喋る事が出来る為……こうして、ぎこちないながらも自己紹介をする事が出来たのだ。
 それに先生とレアリィが驚いているのが解る。特にレアリィの驚きは明確で――けれど彼女は俺のやった事を理解したのか、真剣な顔でアリア達を見つめ、
「私は……れありぃ、こーすと、と言います。……凄い、本当に言えました」
「ああ、言えた。これからはこうやって自己紹介すれば良いんだな」
「ですね」
 と、勝手に納得する俺達を置いて、先生が疑問符を浮かべ続けているクレア達に軽く説明をしてくれた。それを聞きながら椅子に腰掛け、しかし俺達は「やれば出来るものだ」と喜びを分かち合う。
 記憶が混在した事で、俺達には少しずつ、けれど確実に障害が生まれていた。だが、こうして工夫すればそれを乗り越えていく事が可能だと解ったのだ。先生の不安も、こうして一つずつ消えていくに違いない。
 その後、紫藤さんがアリア達へと料理を運んできて、俺達は和やかに食事を進め……ふと、対面に座っているテオから声が来た。
「そういえば……サツキ、君が魔王候補という事で良いんだな?」
「ああ、そうな――そうなりますね」
 年上だろうテオにタメ口は不味いか。そう思った俺に、彼は苦笑し、
「畏まらなくて良い。俺はそういうのが苦手なんだ」
「あ、わたしも普通で大丈夫だから」
 そう告げるアリアに、俺は「解った」と頷き、
「それじゃ、改めて。俺が魔王候補で間違いない。そして、レアリィが俺のパートナーになる」
「そうだったか。では、誤解が生まれぬ内に説明しておこう。俺はアリアの付き添いであり、魔王というものに興味は無い。とはいえ、これから長い付き合いになるのだろうから、どうか宜しくたの――」と、そこまで言って、しかし少し首を捻り、「――いや、これから君はアリアとライバルになるのだから、宜しくと言うのは間違いか?」
「別に良いじゃない。ちゃんと選定をして魔王になるんだから、今からギスギスしてても楽しくないよ」
 そう言ってアリアが笑う。その笑顔は春の日差しのように暖かく、場の空気を和らげるような力を持っているように感じられた。……まぁ、その隣でクレアがにやにやしながらこっちを見ていなければ、なのだが。
「何か言ったかしら、お兄ちゃん?」
「い、いえ、何も……」
 そうして、合間合間に注がれるクレアからの視線にビクビクしながらも食事は進み――不意にある事に気が付いて、俺は先生へと視線を向け、
「そういえば、夜城達は今日も部屋で飯を? というか、最近姿を見て無い気がするんですが」
「あの二人なら、『探し者を再会する』って言って、三日ほど前に城を出て行ったわ」
「……大丈夫なんスか、色々」
 アリア達の居る手前、細部をぼかしつつ問い掛けると、先生は微笑みを浮かべ、
「心配する事は無いわ。相応の準備と知識は叩き込んでおいたから」
 何度も世界を渡っているらしい先生の知識を教え込まれたのならば、確かに大丈夫なのだろう。
 だが、彼等の『探し者』が殺人鬼である事を俺は知っている。まぁ、詳しい事情までは解らないが……いつか戻ってくるだろう二人の顔に笑顔がある事を望みつつ、俺はパンに手を伸ばす。

 その笑みが、血塗られたもので無い事を祈りながら。



 食事が終わり、各自が部屋に戻っていく中、俺はレアリィに一言断ってからクレアの後を追った。俺には、彼女に伝えるべき言葉があるのだ。
「あの、クレアさん」
 呼び声に、曲がり角を曲がろうとしていたクレアが足を止めた。彼女は少し意外そうに、しかし楽しげな笑みを浮かべ、
「なに、お兄ちゃん。っていうか、その『クレアさん』っていう他人行儀な呼び方は止めて。お兄ちゃんの場合は特別に、クーちゃん、って呼んで良いよ」
「え、じゃあ……クーさんで」
 何が特別なのか良く解らないが、流石にちゃん付けで呼べるほど俺の神経は太くない。それを解った上でからかっているのか、クーさんは笑みを崩さず、
「まぁ、良いけどね。それで、一体私に何の用かしら?」
 可愛らしく小首を傾げるその様子に、昼間見た残虐さは全く感じられない。だからこそ俺は彼女とこうしているのが恐ろしく……しかしそれを振り払うように、俺は深く頭を下げると、
「――すみませんでした。そして、有り難う御座いました」
「はい?」
 何を言っているのかしら、と言わんばかりの顔をしているクーさんを前に、俺は言葉を重ねて行く。
「昼間の、暴漢に襲われていた貴女を助けに入った時の事です。あの時、もしあのままクーさんが行動を起こさなかったら、俺はきっと貴女を助けられないまま無様にやられていたと思います」
「だからすみませんって?」
「そうです。それに、俺はあのままだったら暴漢達に殺されていたかもしれません。それを助けて貰ったお礼に、有り難う、と」
 真っ直ぐにそう告げる俺に対し、クーさんは珍しい物を見るかのように俺を見上げ……そして、今まで浮かべていた笑顔とは違う、どこか大人びた笑みを浮かべると、
「意外ね。君はああいう殺しを否定するようなタイプだと思ってたけど」
 人気のない廊下に響くのは、背筋を振るわせるほどに妖艶な声だった。その変化に戸惑いながらも、俺は必死にクーさんと目を合わせながら、
「やりすぎだったとは思いますし、それを正当化するのも不味いとも思います。簡単に言ってしまえば、殺しは悪で、重罪で――そんなのは理解してるつもりです。でも、」
 ――ステキナエガオを張り付かせた男の顔を思い出す。過去の俺達の幸せを奪った、全ての元凶の姿を思い出す。
「俺は聖人じゃないですから。憎ければ、許せなければ、俺はソイツを殺します」
 例え俺が学生のままだったとしても、レアリィが傷付けられるような出来事があれば、その怒りに身を任せて行動を起こすだろう。例えその結果自分が捕まると解っていても、犯人を殺そうと思うだろう。
 それがどこまでも幼稚で、感情に任せた子供染みた考えだという事は解っている。この世界にも司法というものがあり、犯罪者を取り締まる組織が存在しているのだから。
 だが、世界の仕組みがどうであれ、一度溢れた感情はそう簡単には止められない。現に俺は、その感情に突き動かされるままに行動し、この手を血に染めたのだ。それが歴史的には過去の出来事であろうと、当時の記憶を甦らせた俺には、まだ数日前の出来事でしかない。
 だから俺は、殺人を肯定せず、しかし否定もしない。とはいっても、誰かに殺されても文句を言わない、という訳ではなく――ただ、誰かの殺意を買うような生き方をしたくないだけなのだ。まぁ、昼間はそれを失敗してしまった訳だが。
 そんな俺に対し、クーさんは微笑みを強め、
「真っ直ぐねぇ」
 そう言って小さく息を吐くと、再び楽しげな笑みに戻り、
「でも、そういうのは嫌いじゃないかな。ただ頭ごなしに『人殺しは悪だ!』って糾弾してくる馬鹿とは比べ物にならないくらい、ね。まぁ、その考え方だと私の生き方は理解出来ないだろうけど……でも、自分に正直なのは良い事だもの」
「クーさんの、生き方?」
「うん。お兄ちゃんの言う殺人は感情の発露によるものでしょ? でも私はね、誰かを殺す事に感情を必要としないの」
 それはつまり、飛んで来た羽虫を潰すのと同じように人間を殺せる、という事。
 その事実に言葉を失う俺に対し、クーさんは「ま、驚くのは当然よね」と呟いてから、
「ともあれ、お兄ちゃんの事を認めてあげるね。ちーちゃんやレアリィの付属品じゃなく、一人の男の人としてねー」
 一瞬前の発言が嘘かのような、夏の向日葵のような笑みを浮かべるクーさんの様子に、脳が理解を拒み始めた。過去の記憶を取り戻し、魔法などに関しても今まで以上に理解出来るようになったつもりだったが……俺はここまで異常な人を見た事が無い。
 対するクーさんはそれを自覚しているのか、楽しげな様子のまま、
「普段の私は汚れ仕事専門だから、尚更に感覚が麻痺しちゃってるの。だから無理に理解しようとしなくても大丈夫よ? あ、一応教えておくとね、昼間殺した男達は中央大陸にあるアレキスって国で指名手配されてた犯罪者グループの残党だったの。で、このディーシアに入国してるのが判明した場合、捕らえて死刑って命令が下ってた。だからお兄ちゃんが『殺されていたかもしれない』って思ったのは間違いじゃなくて……ついでに言えば、私にはお咎めがないの。今言ったように、私はそういう仕事を行う立場の人間だから」
「ですが……」
「本当、お兄ちゃんは真っ直ぐだねー」そう言って微笑むと、しかし不意に何かを思い付いたのか、クーさんは意地悪げな笑みを浮かべ、「まぁ、私の事は置いといて……お兄ちゃんは、過去の罪を償うの?」
「そ、それは……」
「ちーちゃんから事情は聞いてるから、大概の事は知ってるつもりよ。だからこそ、教えて欲しいかな。――過去に王子達を殺した罪を、お兄ちゃんは償うの?」
 静かに響いたその言葉に、何も言い返せなくなる。
 それは、レアリィにも告げられずにいる事だった。
 過去のレアリィを――早苗を奪った王子達を殺した事に関しては、全く後悔していない。しかし、『誰かの命』を奪い、結果的に一つの国家を滅ぼす切っ掛けを作ってしまった、という事に関してはどうしても後ろ暗いものを感じてしまうのだ。
 そんな俺の気持ちを見透かすように、クーさんは俺を見上げながら、
「もしお兄ちゃんに償う気持ちがあるのなら、魔王になってみるのも一興じゃない? 国王なんて、一番恨み辛みを向けられる存在なんだから。きっと、死ぬまで罪の意識を背負っていけるわ」
「でも、俺は、」
「器じゃない? そんな事言ってたら、アリアちゃんなんかどうするの? あの子、私の口車に乗せられて付いてきちゃったようなものなのよ?」
 そんな事を俺に教えて良いのだろうか。そう思う間もなく、クーさんは言葉を重ねた。
「ちーちゃんの事だから、もう話してあるでしょうけど……魔王なんて所詮傀儡なのよ。でも、一応は人前に出るお人形だから、相応の器が必要になる。もしお兄ちゃんがそれに相応しくないと思ってるのなら、自分を磨けば良いと思うわ。何せお兄ちゃんの隣には、レアリィが付いてるんだからね」
 そう言って、クレアさんは笑顔に戻り、
「それに、私もお兄ちゃんの事を気に入ったし……そうでなくても、お兄ちゃんは魔王になれる可能性が高いと私は思うわ」
 アリアちゃんも負けてないけどね。そう笑顔で言いながら、クーさんは視線を廊下の先にある窓へと向け、
「そうして魔王になれば、人々の命を否応無しに握る事になる。そして死ぬまで苦しみ続けるの。……どう? 贖罪としては、結構美しいと思うけどねー」
「……それで何が報われるんでしょうか」
「さー、それは私に聞かれても。私にとってみたら、贖罪なんて生きてる者の自己満足としか思えないから」
 とはいえ、そうやって一つの国家を背負う事で、一つの国家を滅ぼす切っ掛けを作った罪を償えるというのなら――例えそれがただの自己満足に過ぎないものだとしても、そこに罪の意識を感じてしまう以上、俺はそれを背負っていくしかないのだろう。
 だからこその、魔王の地位。
 正直、正式に魔王候補として認められたとはいえ、本当にそれになれるとは思っていなかった。けれど、魔王になる事によってこの国を救っていけるのなら、俺は――
「……頑張ってみます。贖罪もありますが……それ以上に、俺は兵士でもありましたから。誰かを救う為に生きてきた以上、これからもそれを続けていきたいと思うので」
「なら、これでアリアちゃんのライバルとしても認められるわね」
「ライバル、ですか。でも、アリアは何も知らないんじゃないんですか?」
 問い掛けに、クーさんは「甘いわね」と、まるで生徒のミスを咎める教師のように告げ、
「あの子の恋人であるテオが、結構曲者なのよー。というか、彼が居るから私はアリアちゃんを候補に選んだんだけど……まぁ、この辺はヒミツって事で」
「そう、ですか」
 詳しく聞けば教えてくれそうな雰囲気ではあるものの、ヒミツ、というのだからこれ以上聞くべきではないのだろう。そう思いながら、俺はクーさんに改めて視線を向け、
「……最後に一つ、良いですか?」
「んー?」
「レアリィと、仲悪いんですか?」
 食道でのやり取りを見ていた限りでは仲が良さそうに見えたが、表面上そうしているだけですよ、と言われても信じてしまいそうな仲の良さに感じたのだ。
 そんな俺に対し、クーさんはちょっと心外そうな表情し、
「えー、ラブラブよ?」
「……悪いんですね?」
「だからラブラブなんだってば」そう言ってクーさんは苦笑し、「嘘じゃなくて、本当に仲良しさんなの。でもね、私達はお互いを受け入れる事が出来ない悲しい関係なのよ」
「受け入れる?」
「そう。さっきも言ったけど、私は人殺しを何とも思わない部類の人間なわけ。でもね、あの子はそれを理解してても受け入れられない。潔癖――とは違うんだろうけど、どうしても駄目なんだって。で、私はそういう奇麗事を言われるのが駄目なの。
 ほら、お兄ちゃんにもあるでしょ? 解ってるけど、でもどうにも理解出来ないって感覚。例えば……そう、食べ物の食わず嫌いに似てるかな。食べられるって解ってても、どうしても無理な物ってあるじゃない? 私達の関係はそういう感じなの。お互いの事が理解出来ないのよー」
 だから受け入れられない。しかし、
「理解出来ないのはその殺人に関する事だけで、あとは普通に仲良しさんなの。その証拠に、私はレアリィの為なら何人だって殺してみせるわ。そのくらい彼女の事を愛してるから。――ね、レアリィ?」
 問い掛けるような言葉と共にクーさんが廊下の影へと視線を向け……そして、そこから不安げな、ともすれば少しばつが悪そうにも見える表情をしたレアリィが現れた。恐らく俺達の会話をずっと盗み聞きしていたのだろう彼女は、俺の隣へとやって来ると、
「ごめんなさい、五月。クレアさんと話をするなんて言い出したから、どうしても心配になってしまって。……取って喰われないか」
「ひどーい!」
「酷くないです」
 ぷんすかと怒りながら抗議するクーさんをレアリィが軽くいなしていく。そして彼女は改めて俺に視線を向けると、
「クレアさんの言う通り、私は彼女が受け入れられません。でも、確かに仲良しでもあるんです。矛盾しているかもしれませんが……」
「これが私達の築き上げた関係なの」
 そう言って、クーさんがこの日一番の笑みを浮かべた。
 ……正直、俺にはくるくると表情を変えるこのクレアという少女がどこまで信じられるのか解らないし、今後信じられる相手になるのかどうかも解らない。しかし、このとびきりの笑顔だけは信じて良いような気が――って、これはクーさんの策略なのだろうか。
 そうして悩み出す俺の姿が滑稽なのか、クーさんがくすくすと笑みを零し、レアリィがそれを注意し――そしてクーさんが場を改めるように、
「それじゃ、そろそろ部屋に戻りましょうか。……あ、レアリィ、今夜は一緒にお風呂に入るわよ? 当然カイナちゃんも一緒だからね」
 軽やかに歩き出しながらの言葉に、レアリィは俺の手を取りながら、
「……一緒に入るのは良いですが、カイナの髪は洗わせませんよ」
「けちー!」
「ケチじゃありません。クレアさんはカイナが何も言わないからって、あの子の髪で遊ぼうとしますからね」
「ならレアリィのを洗うもん!」
「どんな切り替えしですかそれ。……爪立てません?」
「大丈夫!」
 と、そんな会話を聞きながら、俺はレアリィに引かれるようにして廊下を歩いて行く。そして目の前でわいわいと繰り広げられていく会話を眺めていたら、思わず疑問が口に出ていた。
「……あのさ、レアリィ」
「ん?」
「疑う訳じゃないんだが、二人は本当に仲が良いのか?」
 その問い掛けにレアリィとクーさんが顔を見合わせ、そして俺に向けて笑みを浮かべると、
「仲良しですよ。一緒にご飯を食べたり、お風呂に入るのはいつもの事ですし、」
「一時期はベッドも一緒だったくらいに仲良しさんよ。まぁ、こと戦闘になると無理だけど」
「ですね」
 どうやらその辺りの区別はしっかりしているらしい。それを改めて確認しながら、俺はもう一つ気になっていた事を問い掛ける。
「あと、カイナはクーさんにも懐いているのか」
「はい。あの子はこの人がどんな狂人か知らないので」
 そうあっさり答えるレアリィに、歩き出そうとしていたクーさんが振り返り、
「オンナには秘密が付き物だもの。だからあの子には教えてないのよ」
 と、文句を言うどころか妖艶に笑ってみせた。対するレアリィはそれに溜め息を吐きつつ、
「そうやって胡散臭い振る舞いばっかりしているから、五月に疑われるんですよ」
「なんかレアリィ、記憶が戻ってからツッコミが激しくなったわ……」
 しくしくしく、と泣くふりをするクーさんの手を、レアリィが『仕方ないなぁ』と言わんばかりの表情で取り、そのまま俺達三人は長い廊下を歩いていく。
 どうやら彼女達は本当に仲良しのようで……しかし、それに安心して良いのかどうか最後まで解らないまま、俺は部屋に戻ったのだった。





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