そんなお出かけ。

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 部屋を出た彼等のあとを追うようにして、レアリィも玄関へと向かう。
 と、一歩を踏み出した瞬間に先生から声を掛けられた。
「レアリィ、ちょっと良いかしら」
「あ、はい」
 立ち止まると、ドアから体を半分を出した彼がこちらを待っているのが見えた。その姿に「すぐに行きますから」と微笑みを返し、ドアを閉める姿を確認する。そして、レアリィはコタツに入り直した先生へと視線を向けた。
「なんでしょうか?」
 問い掛けに、先生は神妙な顔で、
「彼が、私の捜し求めている相手かもしれないわ」
 それはレアリィも予測していた事だった。けれどそれを先生本人から言われると、どうしても衝撃を受けてしまう。それが顔に出てしまったのか、先生は表情を曇らせながらも、
「だから、彼に過去の記憶があるのか否かを確かめたいの」
「……方法があるんですか?」
 一気に暗くなる気持ちを抑えて聞くと、先生は頷き、
「一応ね。でも、その事によって今の彼の記憶に影響が出る事は無いわ」
「何で断言出来るんです?」
 その問いに、レアリィの師匠である女性は少し淋しさを感じる微笑みを浮かべ、
「今までに何度も試して来た方法だから。まぁ、詳しい事はその時に説明するから安心して」
「解りました……。でも、本当に大丈夫なんですね?」
 もし彼が先生の探している相手だとしたら、その恋人となる相手もどこかに存在している事になる。もしもこの世界にその相手が存在していて、その記憶を保有し続けていた場合、二人は結ばれる事となるのだろう。
 レアリィがどんなに頑張ろうとも、探し人の片割れが現れたら最後、芽生え始めたこの恋は完全に散り失せるのだ。
 例え相手が見付からなかったとしても、彼の記憶が混濁してしまったら、その想いは過去へと傾く。そうなれば、レアリィの気持ちに応えてくれる可能性はなくなるだろう。身勝手だとは解っても、そんな事態になるのは嫌だった。
 そう思うレアリィの気持ちに気付いているのか、先生はこちらを安心させるように、
「大丈夫よ。貴方の師匠である私を信じて」
 その言葉に、レアリィは無言で思考する。自分の師匠を信じ切る事が出来るかどうかと。
 そして、
「……一応、信じます。私は先生以上の魔法使いを知りませんし、存在するとも思っていません。だから、信じる事にします」
「ありがとう」
 ほっとしたように言い、先生が微笑んだ。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
 だが、信じるとは答えたものの、内心複雑な気持ちのままレアリィは部屋を出た。
 大丈夫だと、そう自分に言い聞かせながら。

 


 どうやらレアリィは先生と何か話があるようだ。
 そう判断しながら部屋を出て、「俺には敬語じゃなくて良い」と言う青年の後ろに付いて行く形で、俺はもう一人の居候が居るという部屋へと向かった。
 と、数歩先を歩く青年が俺へと視線を向け、
「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は藍貴・夜城(あおき・やしろ)と言う。取り合えず先に聞いておくが、アンタは『こちら側』の人間なんだよな?」
「ああ。でも、一応魔法については話を聞いてる」
「なら説明はいらないな。俺達もこの世界の住人じゃ無いんだ。んで、アンタの名前は――」
 と、その時だ。あと二メートルほどに迫ったドアがいきなり開いた。
 同時に、一人の少女が飛び出してきた。彼女は長い髪を振り乱しながら、周囲を慌てた様子で確認し――俺の隣にいる夜城と名乗った青年を見て、その動きを止め、安堵の息を吐くと、
「良かった……。どこ行ってたの?」
「ちょっと買い物の前準備に」
「そっか」
「ごめんな。すぐ戻るつもりだったから、寝てたのを起こさないように部屋を出たんだが……」
「ん、良いよ。でも次は絶対に起こしてね」
「解った」
 そう言って、夜城が現れた少女を抱き締めた。そんな俺の存在を完全に無視して進んでいく光景に、さてどうしたものかと思っていると、不意に少女の視線がこちらへ向いた。同時に、少女が足でドアを閉める。その視線は、夜城に向けられていた時とは違い、朱く鋭い。
「で、彼はどなた?」
「俺達の道案内さんだ」
 夜城の紹介に苦笑しつつ、俺は頭を下げる。
「よろしく」
「よろしくお願いね。……じゃあ、私達の準備が終わったら早速買い物へ行きましょうか。道案内さんが居てくれるなら、迷わずに色んな所を回る事が出来るだろうし」
 言って、少女が夜城から離れ、そしてその手を取るのが見えた。
「という事で、よろしく頼む」
「ああ。こちらこそ」
 表情を変えずに言う夜城に、その行為が二人にとって当たり前のものなのだと感じる。恐らく恋人同士なのだろう。
 まぁ、今はそんな事はどうでも良い。確認の為に、俺は二人に問い掛ける。
「えっと、取り敢えず確認。二人はこの世界の事をどのくらい知ってるんだ?」
「正直に言えば、右も左も解らない。俺達はついこの間『こちら側』に来たばかりなんでな。……まぁ、一応交通ルールは教えて貰ったが」
 そう答える夜城に少女が続き、
「確か、信号は青になったら渡って良いのよね」
「あー……横断歩道では手を上げるんだったか」
「そうそう。あと道を歩く時は右側を歩くとか」
 と、俺にとっては当たり前の事を真剣に話す二人を見て、本当に何も知らないんだと確信する。
「解った。色々教えるから、覚悟しといてくれ」
「お手柔らかにね。でも、さっき言った事は合ってるのよね?」
「合ってるよ。でも、律儀に守ってる奴は少ないかな」
 苦笑と共に言うと、背後でドアの開く音が響いた。見れば、そこには鍵を閉めようとしているレアリィの姿。その表情は何か思いつめているように見え――しかし、俺達の姿を見るとすぐに微笑みを作った。
「お待たせしました。行きましょう」
 言いながら俺の隣に並んだ彼女の微笑みは、いつもとは少し違う――学校で良く目にしていた――少し無理をした微笑みである気がした。何かあったのかもしれないし、あとで詳しく話を聞こう。そう思っていると、夜城から声が来た。
「その前に、自己紹介をしとかないか。これから一ヶ月間、色々と世話になる訳だし……最初には伝えずにおいたが、互いに名前を知らないってのも不便だろうからな」
「それもそうだ……って、レアリィとも自己紹介をしてなかったのか?」
 俺の質問に夜城は頷き、
「本来なら俺達二人だけで行動するつもりだったからな。自己紹介はしないようにしてたんだよ。……って、良いよな?」
 言いながら、夜城が隣に立つ少女に確認を取った。彼女はそれに頷きつつ、
「確かに不便ね。それに、宿を借りさせて貰ってる恩人の名前を知らないままなのも失礼だし」
「と、いう事で自己紹介な。俺は藍貴・夜城と言う。で、」
「私はあか――」
 と、少女が自分の名前を言い掛け、しかし驚きの表情と共にそれを止めてしまった。
 その視線は、一階へと続く階段の方へと向けられていた。まるで開いた口が塞がらないと言わんばかりのその姿に、釣られるように夜城が視線を向け――同じように目を見開いたまま止まってしまった。何事かと俺も視線を階段へと向けて、同じように固まった。
 何故なら、そこには、
「みんな、元気にしてるかな?」
 にこやかに笑う友人の姿があったのだから。
 途端、一気に思考が混乱する。
 訳が解らない。何故こんな所にコイツが居る? それに、『みんな』と言った以上、夜城達とも関わりがあるという事なのだろうか。と、そう考えて思い出す。以前、友人がコンビニに居た俺を見たと言っていた時の事を。今思うに、あの時に見た二人組みは夜城達だったのではないだろうか。
「なんでお前が……?!」「なんで貴方が?!」「お前……!」
 疑問の声は三人同時に出た。その声に友人は肩をすくめると、微笑みを消さぬまま口を開く。その口調は、俺と会話をしていた時とはまるで違っていた。
「ちょっとした気まぐれって奴さ。そして今回の出逢いもイレギュラーだったりする。或いはフラグ立て、かな?」
「今回もって、一体何言ってんだ? それに、イレギュラーって……」
「そんな事関係ないわ! 秘宝であった貴方がなんで『こちら側』に?!」
 自分の声が動揺しているのが解る。だが、それ以上に強い声で少女が問う。秘宝という言葉の意味は解らないが、夜城達とも何かの繋がりがるのはこれで確かとなった。
 しかし、対する友人の態度は変わらない。
「まぁまぁ、そう焦らない焦らない。ちゃんと説明してあげる日が来るから、それまで待っていて欲しい」
 微笑みながら言うと、友人は更に言葉を続ける。
「それはともかく、今日はみんながちゃんと出逢えたかどうかの確認に来ただけだから……これでさよならだね」
「ちょと待って! 貴方には聞きたい事があるの!」
 俺の脇を抜け、夜城の手を握ったままの少女が友人へと詰め寄っていく。それに変わらぬ微笑みを返すと、友人は軽く右腕を上げた。
「それじゃ、また逢える日まで」
 言って、高く指が鳴らされる。
 その瞬間――



 気が付けば、ボケっと廊下に突っ立っていた。
「あれ……?」
 今、何かあったような気がするのだが……まぁ、気のせいだろう。
「んじゃまぁ、買い物に行きますか」
 仕切り直すように、何故かきょとんとしているレアリィ、そして夜城達を促すように言う。その言葉に三者三様の形で頷き、着替えるという夜城達が部屋へと戻っていった。
 それを見届けてから、俺はレアリィの手を取ると、
「さっき一瞬だけ変な感じがしたんだけど、レアリィはどうだった?」
「私もしました」
「やっぱりか。……気のせいかもしれないけど、前にも似たような事があった気がするんだよな……」
 そう言ったところで、どうでも良い知識が顔を出した。
「もしかして、宇宙人のアブダクションだったりして」
「あぶだくしょん?」
「あれ、知らないか。アブダクションっていうのは、宇宙人に連れ去れて――」
 と、場の空気が暗くならないよう、聞きかじりの知識を披露しながら時間を潰す。
 暫くして、先生が用意したのだという洋服に着替えた夜城達が戻って来て、俺達は外へと繋がる階段を下りた。そしてアパートの正面に広がる駐車場へと出ると、さてどこへ向かおうか、と考える。
 もう夕方に近いし、何軒も店を回るには時間が無いだろう。その事を念頭に置きつつ、俺は夜城に問い掛ける。
「まず、二人は何を買うつもりでいるんだ?」
「取り敢えず米は買って帰るつもりではいるんだが、まだどんな物が売っているのかすら解らない状況なんだよ。だから、今の時点では具体的にどうこう言えないな」
「解った。行く場所の参考にする」
「すまんな。初対面の相手にこうして苦労掛けるのはどうかとも思うんだが……」
「良いって良いって」
 寡黙な……というより、やる気の無さそうな表情をしている癖に思ったより口数が多い夜城に笑い返しながら、俺は目的地を脳内で決めて行く。出来れば売っている物が分かれている商店街の方へと向かいたかったけれど、目的がないのならば時間が掛かってしまうだけだろう。
 となれば、
「学校の近くにあるスーパーにでも行くか。あそこならここからでもそんな遠くないし。レアリィはどう思う?」
「賛成です。あのスーパーは私もちょくちょく利用してるので勝手も解りますし」
「なら、あの店で」
「……話が決まったような所で悪いんだけど、スーパーって何?」
 後ろから聞こえた少女の声に振り返り、そして、疑問符を頭に浮かべた彼女達に俺達は苦笑する。
「そっか、それすら知らないんだよな。えっと……スーパーって言うのは略称で、実際にはスーパーマーケットって言うんだ。いわゆる何でも屋だな」
「何でも屋?」
「そう。野菜や肉、魚に果物、飲み物から惣菜品、日用雑貨まで何でも御座れな場所だと思ってくれれば良い。それと……」
 歩きながら説明を続けていく。そんなに長い道程じゃないけれど、良い話の種にはなりそうだった。



 見るもの全てに驚いている夜城達にこの世界のあれこれを教えながら、買い物の時間は進んでいき……会計を済ます頃には結構な時間が経っていた。
 一応食べ物の基本は『向こう側』も『こちら側』も変わらないらしい。とはいえ、加工の仕方の違いなどから、知識に無い食品の方が圧倒的に多かったようだった。同時にそれは、自分の中の当たり前が通用しない世界が存在する事を感じさせる瞬間でもあった。
 まぁ、まるで現実感が伴わないのが正直な所ではあるんだけれど。
 そんなこんなでアパートへと戻ってくると、買い込んだ食材を夜城達の部屋へと運び込んでいく。
 が、
「……冷蔵庫が無い」
 呟いた俺に、少女の声が来た。
「冷蔵庫って、あの白い箱の事よね」
「白い箱?」
 その言葉に疑問符を浮かべていると、レアリィから「先生の部屋にあるのが白いので」と教えて貰った。どうやら夜城達は冷蔵庫の存在は知っているようだ。
 それはともかく、
「さて、どうしたもんかな」
 今は冬の寒さが一番辛い時期だ。夏場とは違ってすぐに食品が傷んでしまう事は無いけれど、だからといってそのまま放置しておく訳にもいかない。
 隣で一緒に悩むレアリィに視線を向けると、彼女は困ったように苦笑したあと、
「取り敢えず、今日は先生の部屋にある冷蔵庫を使わせてもらいましょう。今日の様子を見るに、多分空っぽでしょうから」
「ごめんね。買い物に付き合って貰ったのに、そこまでしてもらって」
「いえいえ、気にしないでください。では、もう運んでしまいますか?」
 その問い掛けに、夜城は手に提げていた袋の中身を確認しながら、
「いや、夕飯の下準備を終えてからにするかな」
「解りました。先生には私から伝えておきますので」
 そうしてレアリィと共に夜城達の部屋を出ると、そのまま先生の部屋へと向かい、事の経緯を話していく。
 冷蔵庫が無いという事実に、先生は「すっかり忘れてた……」と小さく呟いたあと、
「レアリィの予想通り、冷蔵庫は空っぽよ。だからすぐにでも使えるわ」そう苦笑し、「……で、買い物の方はどうだった?」
 その問いに、先程までの事を思い出しながら俺達は答える。
「お二人ともこの世界に来た頃の私のように、様々なものに驚いていました」
「でも、買い物が終わる頃には慣れてきたみたいだったから良かったっスよ。まぁ、完全に慣れるにはもう少し時間が掛かるだろうけど……でも、十分大丈夫だと思います」
「あ、それと、またお金を両替する日が来ると思います」
「ん、解ったわ。今日は本当にありがとう。……そして、ごめんなさい」
 言って、先生が軽く頭を下げる。レアリィに対して、謝っても謝りきれないのだろうと強く感じた。
 対するレアリィは一度俺へと視線を向け、そして自然に微笑むと、
「もう、大丈夫ですから」
「うん……」
 先生が視線を上げる。未だ不安げな浮かべるその姿は、まるで俺達と同年代の少女のようにも見えた。
 それでも、大丈夫だと微笑むレアリィの姿を見て、先生もどうにか笑顔を取り戻せたようだった。
「それでは、私達はここで失礼しますね」
「解ったわ。二人とも気を付けてね」
『はい』
 二人一緒に答えて玄関へと向かう。別れの挨拶を済ませると、俺達は先生の微笑みに見送られながらアパートをあとにした。
 そうして、今度は自分達のマンションへと戻りながら、止め処ない話をしていく。アパートに向かうまでは、先生とレアリィの関係がどうなるか不安があったけれど、二人が和解出来たのは大きな収穫だった。これで、残りの時間を思う存分楽しんでいける。
それに、
「夜城達が良い奴で良かったよ」
「ですね。初めて逢った時にはもっと冷たい感じだったのですが……今日はこの前と全然雰囲気が違いました。だから、今日は一緒に買い物が出来て良かったです」
 笑顔で答えるレアリィに、本当に良かったと思う。やっぱり、浮かない顔をしているレアリィを見るのは耐えられないからだ。
 そうしてマンションへと歩いていき……不意に、彼女へと聞くべき事があったのを思い出した。
「そういえば、元の世界へ戻るまであと一ヶ月しかないって言ってたけど、何で一ヶ月なんだ?」
 それは、昨晩部屋に戻り、落ち着く事が出来たあとに浮んできた疑問だった。その数字にそんな意味があるのか気になったのだ。
「以前説明した通り、門によって繋げられる世界の間隔というのは常に変化しています。ですが、それにも一定の周期があり、大まかな流れなら掴む事が出来るんです」
 凄く大変なんですけどね。そう苦笑しつつ、レアリィは言葉を続ける。
「それで……私達の世界とこの世界との間隔が再び縮まるだろうと思われるのが一ヶ月後なんです。でも、実際に門を開いてみないと、ちゃんと繋がるかどうかは解らないんですけどね」
「そうだったのか……」
 やはり一ヶ月という数字には理由があったのだ。そう思いながら、レアリィの説明の中にあった気になる点を問い掛ける。
「もし門が繋がらなかった場合はどうなるんだ?」
「その場合は、また世界の間隔が近付くだろう時まで待つ事になります」
 言いながら、レアリィは淋しげな表情と共に、
「……もし上手く門が繋がらなかったら、もっと長く一緒に居られるのに……」
「……」
 その悲しげな呟きに俺は言葉を返せなかった。その代わりに、握った手に力を籠める。
 この手を離したくないと、そう伝えるように。



 眼前にマンションが見えてきた頃、静かな沈黙を止めるように俺は一つの提案をした。
「あのさレアリィ。その敬語、止めてみない?」
「敬語を、ですか?」
「あ、いや、別に嫌だって言うんじゃなくて、俺にはタメ口利いて貰って全然構わないって事なんだけど」
 少し焦りつつ、言う。
 もっとキミに近付いてきて来て欲しい。そう思いながら。
「でも、これは昔からの癖になってしまっているんです。だから……いえ、良いんですか?」
「全然大丈夫。というより、大歓迎」
「なら、お言葉に甘える事にします」
「そうしてくれると嬉しい」
 そう告げる俺に笑顔を返すと、レアリィはそれじゃあ、と一言区切るように言い、
「今からは敬語無しで話していくね。でも、どうしてそんな事を?」
 と、すぐに敬語を止めてくれた事を嬉しく思いながら、俺は質問に答えていく。
「前から言い出そうとは思ってたんだ。多分、美術室で二人きりなった時から、ずっと」
「そうだったんだ」
「あと、先生とも敬語で話していたのを見たってのもあるかな。つまりそれって、一年中敬語って事になるだろうしさ」
「んー……昔は敬語だけって事は無かったんだけど、先生はずっと私の先生だったから。気が付けばそれが当たり前になってたのかもしれない。だから確かに、こうやって普通に話すのは久しぶり」
 そう言ってレアリィが微笑む。敬語を使わずに喋るその姿は、いつもより少し幼げに感じられた。そして、それが彼女の素なのだと実感する。
 そんなレアリィの一面を知る事が出来たのが嬉しくて、だから俺も自然と笑みを浮かべていたのだった。





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