しゅき。

――――――――――――――――――――――――――――

0  

 春の日の幻想郷。
 今年は季節を狂わせる程の異変は起こらず、普段通りの春が訪れていた。
 冬という季節を忘れ去るかのように上昇する気温は、長く眠りこけていた草花を芽吹かせ、そして今は、春を象徴する桜が満開の時期となっていた。
 咲き誇った桜は陽光と春風を纏って優しく揺れ、その根元に様々な『もの』を呼び寄せる。
 今、八雲・紫の視線の先には実に様々な『もの』がある。
 それを『物』と呼ぶなら、大量に転がった酒瓶や重箱であり、それを『者』と呼ぶなら、宴会を楽しむ少女達の姿だ。
 春の陽気と桜の妖気に誘われて行われる宴会は、もう連日続いていた。
   
……
   
 幻想郷の春。
 そう、今年は何の異変も起こらなかった。
 冬の妖怪は普段通りに眠りに付き、春の妖精は普段通りに春を知らせに来た。
 そしてそれを合図とするように、神社での宴会が始まったのだ。
 騒がしさから一歩引いた場所で酒を傾ける紫には、実に様々な『もの』が見える。
 それは酒瓶や重箱であり、騒ぐ少女達の姿。
 連日の宴会を引き起こしている要因でもある、一人の少女の姿。
  
1
   
 その日も、飽きもせずに宴会は行われていた。
 神社の境内にある桜の木の下、陽光に照らされたそこには大きな茣蓙が敷かれ、多種多様な人妖が集まっている。
 具体的に述べるなら、巫女に魔法使いに人形遣い、メイドに吸血鬼に魔女に門番、幽霊に剣士と、見慣れた顔触ればかりである。
 そしてその中心に一人の少女が居た。彼女は今日も楽しげに笑いながら、皆と酒を飲み、喰い、騒ぎ、暴れていた。
 紫はその姿を今日も眺め……そして、不意に少女へと声を掛けた。
「ねぇ、萃香」
「なーにぃ?」
 赤い顔に笑顔を持った少女は上機嫌に答えると、少々覚束無い足取りでこちらへとやって来た。
 かなり酒臭い。
 しかし紫は笑顔を持って少女、伊吹・萃香に問い掛ける。
「楽しい?」
「あったりまえー!」
 萃香の答えに紫は小さく頷き、
「じゃあ、もう少し優雅に飲まない?」
 問い掛ける。
 紫には、ここ最近の萃香の飲み方がどうにも乱雑になったように感じていた。
 それは永夜の夜の前、初めて皆の前に彼女が顔を出した頃から感じていた事ではあったのだが……最近はそれがやけに顕著なのである。
 ただ宴会を楽しんでいるだけなのだろうが、どうにも気になって仕方がないのだ。
 だからこその問い掛けだったのだが、 
「えー、もー、そんなこといってないでさぁー……」
 言って、萃香は腰に吊るした古びた瓢箪を手に取った。風呂上りに飲む瓶牛乳の如く、彼女は空いた手を腰に当て、顔を上げて瓢箪へと口を付け、
「――」
 中身の減らない酒を喉を鳴らして飲み、
「っはー! ほらほらぁ、ゆかりものんだのんだー!」
「……」
 完全に飲んだくれと化している萃香に溜め息を吐きつつ、内心呆れる。
 誇り高き鬼がこんな事でどうするのか、と思いつつ、紫はある事を閃いた。
 ……でも。
 しかしそれはこの少女を苦しめ、悩ませる結果になるだろう。流石に相手が萃香とはいえ、紫にも可哀相という気持ちが――
「のめー!」
 上機嫌に笑いながら、萃香が紫の飲んでいた赤ワインのグラスに酒を足した。当然、手に持った瓢箪で。
 赤い色が薄くなり、一気にその量を倍にする。
「ほらほらのむのむー」 
 ずい、とグラスを差し出してくる萃香に、全くこの娘は何をしてくれやがるのかしら、と思いながらも紫は微笑みを崩さず、後ろ手に隙間を開いた。
 萃香に関するある境界を弄る為に。
   
 天狗でも通り掛かったのだろうか。慈悲の気持ちは軽く吹き飛んでいた。
  
2
  
 次の日。
「んー……」
 萃香が目を覚ますと、そこには見慣れた天井があった。
 いつの間に家に戻ったのだろうか。はっきりしとしない頭でそんな事を考えつつ、小さく伸びをした。
 そして昨日の事を思い出そうと記憶を手繰り……
「あ、れ?」
 出てこない。
 宴会に行った記憶はある。だが、肝心の宴会に関する記憶が頭から殆ど抜け落ちている事に気が付いた。
 普段ならばこんな事は無いのだが、
「飲みすぎたかな……」
 呟きつつ、普段の調子で体を起こし、
「?! い、つぅ……」
 脳を断続的に殴られているかのように、頭に重い痛みが来た。更に喉の渇きが酷い。
 ……一体、何?!
 突然の事に理解が追いつかない。何が何だか良く解らないが、辛い。
 取り敢えず喉の渇きを解消する為、うー、あー、と呻きながらも布団から這い出し、萃香はのそのそとした動きで井戸へと向かった。
 しかし、普段ならば全く気にしない距離が今日は酷く遠く感じる。それに対する怒りも浮かぶのだが、脳を揺らす痛みに思考が上手く定まらない。
 一歩一歩歩く毎に、心臓の鼓動と同調するように頭に痛みが響いてくる。ここまで酷い頭痛を感じる事は初めてだった。
 十秒も掛からない縁側までの距離をその倍以上の時間を掛けて歩き、力の入らない手で雨戸を開け放つ。直後、目に突き刺さるようにして差し込んで来た朝日に、
「ッ……」
 萃香は小さく声を漏らす。朝日の眩しさが、今日は普段の倍以上の強さに感じられた。
 だが、ここまで来て引き返す訳にもいかない。一旦床に腰を下ろし、ゆっくりとした動きで靴を履く。そのまま土を擦るようにして歩き、ようやく井戸へと辿り着いた。
 少々高さのある井戸の縁に倒れるようにして体を寄せ、桶へと繋がる縄を手に取る。
 萃香はそれを半ば無意識に引き、だが、
「重ッ……」
 本来ならば一瞬で持ち上がる筈の桶が全く持ち上がらない。そもそも体に力が入らない。
 豪腕を持つ鬼としての面目が無いな、とぼんやり思いながら、萃香は仕方なく桶の水を半分以上減らそうとし、
「……」
 減らない。
 縄を引く事が出来ないのだから当たり前だ。
 仕方なく縄から手を離し、滑車から下がるもう一つの桶に両手を掛けた。それを全体重籠めて下に押し、
「んんー!」
 何とか縄が下がり、水音を上げながら水の入った桶が少しだけ上がった。
 そしてその行為を何度も繰り返す事で桶を揺らし、水を減らし、
「……はぁ」
 なんとか持ち上げられそうな重さになった。
 誤ってまた水の中に落としてしまわぬように注意しながら、萃香は再び縄を再び引き始め……
「うー……」
 中々上がって来ない。
 引いても引いても上がって来ない。
 ……こんなに縄って長かったっけ?
「んー……」
 格闘する事一分弱。
 それでも何とか桶を引き上げると、未だ冷たさが残る水へと徐に口を付けた。
 喉を鳴らし、水を飲み、
「はぁー……」
 一息吐くと同時に桶を無造作に手放し、萃香は地にゆっくりと尻を付いた。
 持ち主を失った桶はそのまま井戸の中へと落ち、直後、水の中に桶が落ちた音が響いた。同時にもう片方の桶が上へと上がり、水を撒き散らしながら止まった。
 それをどこか遠くに感じながら、萃香は地面に横になった。
 冷たい土が肌に気持ち良い。
「……」
 小さな雲が一つだけ浮かぶ青空と、視界の端で輝く太陽を眺めながら、萃香は痛む頭の端に、普段とは違う笑みを持った紫の姿があるのを思い出す。
 だが、それが何故普段と違う笑みに感じるのかが解らない。
 ……というかなんというか、私は鬼のくせになんでこんなに頭が痛いのだろうか。――あ、これが噂に聞く二日酔いか。
そうかそうか。って、
「私も二日酔いになるのか……」
 生まれてこの方、宴会を繰り返してきた人生だ。
 幻想郷に仲間の鬼達が消えてから、一時的に何もしていなかった時期があったが、基本的には飲んで騒いでの繰り返しだった。
 しかし、二日酔いなどという現象に襲われた記憶は無く、これはこれで新鮮なものに感じた。
「でも、頭が痛いのは頂けない……」
 呟きつつ、のそのそと体を起こし、
「流石に外で寝転んでるのもアレだ……」
 自分に言い聞かせるように呟いて、やけに遠い布団への道のりを再び歩き出す。
 横になったところで眠れそうにはないが、他に何かをする気は全く起きなかった。
  
……
  
 月明かりの下、大きく開けた場所に集まる者達が居た。
 四方は鬱蒼とした森に囲まれているが、そこだけは何故か木々が無く、まるで抜け落ちたかのように何も存在しなかった。
 そんな森の広場で、その日も宴会が行われていた。
 楽しげに酒を飲み、笑い合う者達の中、その中心に一人の少女が居た。
 彼女の顔は楽しげな笑みで、皆と共に酒を飲んでいる。
 時には少女が話し手となったり、他の者と踊ったり、歌ったりしながら、彼女は宴会の時間を過ごしていく。
 そんな中で、少女は自分の正面に座る相手の杯が空である事に気が付いた。彼女はその杯へと酒を注いでやろうと考え、自身の瓢箪に視線を落とし、手に取り、
「……?」
 少女が顔を上げた瞬間、空の杯を残し、少女の正面に座っていた相手は姿を消していた。
 突然目の前に座っていた相手が消えた事に疑問を得た少女は、隣に座る相手へと視線を向けた。
 そしてその疑問を投げ掛けようとして、
「……」
 そこには誰も居なかった。
 おかしい、と思いながら少女が視線を戻すと、何故か辺りに居た者達の姿も消えていた。
 その光景に、何故、という疑問を抱き、周囲を確認する為に少女は立ち上がった。
 ぐるりと一周、広場を見回し、
「――」
 あるのは、宴の残滓だけ。
 居るのは、少女一人だけ。
「……」
 その事実を確認すると、少女は俯きながら腰を落とした。
 自身の杯を手に取り、手酌で酒を注いでいく。
「……乾杯」
 小さく、まるで自分の声ではないような音が耳に響いた。
 そして独り、酒を飲む。
 また皆で酒を飲める事を心の底から願いながら、少女の宴会は終わった。  
  
……
   
 数時間後。
「ん……」
 小さく唸りながら、萃香は目を覚ました。
 そのまま、床と水平になっている視界で部屋を眺める。意外な事に、いつの間にか眠りにつく事が出来ていたらしい。
 その事をぼんやりとした頭で感じながら、
「嫌な夢見た……」
 呟いて、仰向けに寝返りをうつ。
 あれは仲間達がこの地を去り始め、日を追う毎に独りになっていった頃の夢だ。
 やはり弱っているのだろうか。あんな夢を見る事など、最近は全く無かったというのに。
 そして、ふと気付く。
「あれ、頭痛くない……」
 あれだけ酷かった痛みが嘘のように消えていた。恐らくは眠っている間に、体内に残った酒が全部抜けてくれたのだろう。
 良かった、と思う反面、今日も今日とて宴会が開かれる事を思い出す。
 昨日は記憶を失ってしまう程に飲んでしまったが、今日はそんな事が無いように少しだけ酒を控える事にしよう。
「あの頭痛をまた味わいたくはないし……」
 呟きつつ、萃香はゆっくりと上体を起こした。
 そして暫し虚空を見つめ、
「……何やってんだろ」
 布団に視線を落としながら呟き、一人苦く笑う。
 仲間達が居た頃は、こんな風にゆっくり眠る事も殆ど無かった。毎日毎日宴会を繰り返し、ただ楽しんで生きていた。
 そう、今の時期ならば、顔を出すのが早くなった太陽を眺めながら静かに飲み始め、陽光の下で笑い、月光の下で踊りあった。
 時には近隣の家屋を襲い、時には助け、時には助けられ、しかし彼等は共存していた。
 人と妖では無い、人と鬼の営みが、この場所には確実に存在したのだ。
 それは今の幻想郷とは違うもの。
 今の楽しさとは違う何かが、あの頃にはあったのだ。
 夢を見たせいもあるのだろうか。萃香はそれが何だったかを考えようとして、
「――らしくない、か」
 小さく呟いた。
 それは遠い昔の話だ。まだこの場所に、鬼というものが当たり前に存在していた頃の話。
 戻る事など出来ない過去を考えても意味が無い……そう結論付けて、萃香は布団から出た。
  
3
   
 そして今日も宴会が始まった。
 神社の境内にある桜の木の下、陽光に照らされた石畳の上には昨日と同じメンバーが集まっていた。
 その一人一人が酒や料理を持ち合い、大きく敷かれた茣蓙の上に座り出し、少しずつ場のテンションが上がり始める。
 その中心に、昨日と同じように萃香は居た。
 霊夢と話しながら笑い、適当に料理に手を出そうとしていた彼女に、
「萃香ー」
「んー?」
 声に振り返れば、笑みの魔理沙が徳利を持って立っていた。
 彼女は徳利を軽く振り、
「熱燗にしようと思ってたんだが、今日は暖かいからな。一応冷たいの持ってきた」
「なら瓶で持って来れば良いじゃない」
 霊夢が苦笑しながら言うのを笑みで聞きながら、萃香は己の杯を取り、魔理沙へと差し出した。
 そしてそれに徳利が傾けられ、
「どんくらい行く?」
「っとと、もう平気」
 少々大きさがある杯に酒を注いでもらい、笑みで言う。
 注がれた酒は杯の中でゆらりと揺れ、
「頂くわ」
 今日始めての酒を飲む。
 透明な液体が唇に触れ、舌を流れ、喉に落ち、
「――」
 まるで時を止められたかのように、萃香の動きが停止した。
 ……何、これ。
 記憶が確かなら、今飲んだ液体は日本酒だ。そう、日本酒の筈だ。間違いない。
 しかし、普段なら調子良く飲める筈のそれが、一口飲んだだけで気持ち悪さが来た。
 そして少しずつ顔が熱くなり、同時に頭に痛みが走り出すのを感じる。
 更に、口に残る酒の残滓と喉にある熱が気持ち悪さを増加させる。
「何で……?」
 酒が、飲めない。
 昨日までは普通に飲めていた。にも拘らず、今は体が完全に拒絶している。
「? どうした、萃香?」
「ん、いや、何でもない何でもない」
 首を小さく傾げて聞いてくる魔理沙に何とか笑顔を向けながら、
 ……ヤバい。
 強く思う。もし後一口でも飲めば、確実に胃の中身をぶちまける事になるだろう。
 当然、皆が楽しく飲んでいるこの場所でそんな事は出来ない。 
 だが、嘔吐の危険以上に、自分が酒が飲めなくなったという状況に混乱が高まっていく。一体これはどうした事なのかと、何気なく視線を彼方に向けて、
「……紫」
 微笑む隙間妖怪と目が合った。
   
……
   
 魔理沙と霊夢に一言断り、萃香はふらふらと歩きながら紫の元へと近付いた。
 そして、その微笑みを力無い目で睨みつつ、
「紫……。もしかして何かした?」
「ええ」
 悪ぶる事も無く、微笑みを変えずに紫が言う。
 ……こ、このッ……。
 その姿に文句を言い返したくなるが、気持ち悪くてそれどころではなかった。
「……」
 喉元まで上がっていた声と嘔吐感をぎりぎりのところで押さえ込みながら、萃香は無言で紫を睨み、その隣、桜の木陰へと腰掛けた。
 ゆっくりと背を幹に預け、頭を上げ、
「はぁ……」
 大きく深呼吸を繰り返す。
 肺腑に新鮮な空気が入るだけでも、気持ち悪さは少しだけ軽減された。
 更に木陰の為か、熱くなっている顔に触れる風か心地良い。
 と、そんな萃香の前に透明な液体が入ったグラスが差し出され、
「はい、お水。あと、少しは何か食べた方が負担は軽いわよ」
「うー……」
 力無く紫を睨みつつ、萃香は差し出された水を飲んだ。先程の日本酒とは違い、嫌味な程すんなりと体は受け付けてくれた。
 その事実に切なくなりながらも一息吐き、さて紫に一言文句を……と開いた口は、
「――」
 萃香と紫の前に綺麗に並べられた重箱……その中に詰まる豪勢な料理によって打ち消された。
 その一つ一つを丁寧に並べていた紫の式神は、
「お口に合うと良いのですが」
 微笑んで、箸を一膳手渡してきた。
 それを無言で受け取り、桜の幹から背中を離して料理へと近付き、
「……」
 萃香は重箱の中身に手を出した。
 流石に迷い箸は失礼。そう思いながら、萃香は取り敢えず目に付いた唐揚げを口に運び、
「……ん」
 一口噛み、
「――?!」
 口の中にふわっと拡がる鳥の旨みと、柔らかなその食感に言葉を失った。
 ……唐揚げって、こんなに美味しかったっけ?
 なんだか衝撃的だった。
 そして今更ながらに重箱をまじまじと眺めてみれば、一品一品に手間隙が掛けられているのが解る。
 今まで何気なく摘まんでいたが、こんなにも丁寧に作られていたとは。
「あ、っと……いただき、ます」
 そう思い出したかのように告げ、萃香はゆっくりと、楽しむように肴を食べ始めた。
 そして再び紫が差し出してきた水を一口飲み、一息吐き、
「美味しい?」
 笑みで聞いてくる紫に、
「うん……」
 萃香は気恥ずかしさを感じながら答えた。
 だが、萃香はすぐにその表情に不満の色を浮かべ、
「でも、どうしてこんな事をしたの?」
「萃香が萃香らしく無いからよ」
「……私が私らしく無い? どういう事?」
「さぁ、どういう事でしょうね」
 明らかに誤魔化し、紫はまるで教師のように微笑む。
『自分で答えを見つけてみなさい』と、そう言わんばかりに。
「むー……」
 唇を尖らせながら呟き、しかし萃香は食事を再開させた。
 そして、この『酒が飲めずに食事に専念する』という構図を昔何処かで見た事があるような気がして、
 ……あ。
 不意に思い出した。
 それは過去……萃香が子供だった頃の話。
 大人の鬼達に雑じって宴会に参加し、しかしまだ酒の味と楽しみ方が解らず、萃香は気持ち悪さに襲われた事が度々あった。
 そしてそんな時、決まって彼女は酒を飲む事を諦め、食事に専念したのだ。
 ……完全に忘れてた。
 二日酔いだって、今までに何度か経験した事があった。
 だが、いつの間にか酒を飲んでも次の日に残らなくなっていた為、記憶から失われてしまっていたのだろう。
「……」
 もう一個、と唐揚げを取ろうとしていた箸を止め、考える。
 紫が自分に何を望んでいるのかを。
    





――――――――――――――――――――――――――――
次へ

  

――――――――――――――――――――――――――――
目次

top